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To The Beginning

 スタッフが持って来たシャンパンにも手を付けず、黙ったままの男の前に紫龍は灰皿を置く。
「どうぞ」
「何だ、これは?」
「遠慮は無用だ。吸いたいんじゃないんですか?」
 急に口元が淋しくなったが、ガマン出来ない程では無い。だが、子供はにこやかに笑っている。
「だが、難しい顔をしている」
「ああ、これは考え事というか………」
「では、俺は帰ろうか」
 どうして、そうゆうことになるのか甚だ理解に苦しむ。
「考え事するのに邪魔ではないのか?」
「そもそも邪魔だったら、誘ってない」

 聖剣の稽古を付けるのに、週末ごとに訪れる子供を初めてレストランの食事に誘った。なんとなく帰りがたくて、町をぶらぶらしていたら、雨に降られて手近なカラオケボックスに潜り込んだ。急なことなのでパーティールームみたいなだたっぴろい部屋しか空いてないのは仕方がないこととして、問題は――――、
「何でそんな隅に居るんだ」
「えっ?」
 シュラと紫龍は向かい合わあせのコの字に組んだ端と端。
「ああ、いや、何となく」
「もしかして、俺のことが怖いのか?レストランはでも、話があまり弾まなかったし」
「いや、それは、そのマナーに気を取られて。フランス料理のコースなんて、外で食べたの初めてだったから」
 フォークとナイフを綺麗に使うから、気にならなかったが、年齢を考えれば紫龍の言い分も尤もだ、
「それは悪いことしたな」
「アナタのせいではない。美味しいモノを食べさたせて貰ったんだからな」
「旨かったか」
「でも、やっぱり緊張していたかも」
「何でだ?」
「何でって………」

 そのまま紫龍は少し考え込む。シュラは煙草を吸いたくなったが、ぐっと堪えた。代わりに忘れ去られていた―――何でもサービスだそうだ、シャンパンをグラスに注いだ。少し温く甘ったるいそれは、辛うじて喉の渇きを、―――――どうやら乾いていたらしい、癒してくれた。
 紫龍は、しかし、グラスに見向きもしないで、男を見つめた。まっすぐだった。何もかも黒く艶やかな、手触りの良さそうな長い髪、肢体も、顔立ちもまっすぐなのに、黒い瞳だけは困惑していた。

「怒りませんか?」
「勿論」
「正直、貴方が誘ってくれた理由が判らない」
「理由が居るのか?一緒に食事をするのに」
「聖域の食堂だったり、後、いつもみたいにアナタと一緒に食事を作るならともかく、そのつもりだったし、でも、外にわざわざ行く必要はない」
「だが、外に行かないと二人きりになれないだろう」
「二人きり?なぜだ?」
「何でって………」

 そうするのが当然だったからだ。気のあるそぶりの女が居れば食事に誘うのは列車に乗るようなものだった。眠っていても目的地に連れていってくれる。あれこれ考える必要も無い。ただの段取りである。意味なんて無かった。ギブ&テイク。食べるためというよりは、処理をするため。ただの儀式だった。たった今まで。と、同時にシュラを悩ませていた違和感の正体にようやく思い当たり、シュラは笑いがこみ上げる。

「えっ?どうしたんですか、シュラ」
「ああ、いや。何というか我ながら滑稽だなと」
「アナタが?なぜ」
「折角二人きりなんだから、もっと落ちついた所に行けば良かったなと」
「十分、落ち着いてますが」
「じゃあ、隣に座っていいか」

「構いません」と、云って紫龍は少し後悔した。聖域では意識したことはなかったが、きちんとスーツを着たシュラは、大人で男の人で、―――――何だか急にドキドキしてきた。紫龍は慌ててシュラとは反対方向に身を置いてみた。シュラはソファの背もたれに肘を乗せて、自分をしげしげ見つめている。
「何ですか?」
「いや、緊張している?」
「ええ、まあ、少しは………」
「何で緊張するか教えてやろうか?」
 その揶揄するような云い方がちょっと腹立たしくて、紫龍はいいですと断ると、シュラの端正な顔が近づいてきた。

「じゃあ、キスをしてもいいか?」
「―――――いいですよ」
 たっぷり30秒間、考えてからの答えに、シュラは破顔すると、そっと紫龍の唇を奪った。


――――――――――――――――――――――――――
縛りSSったーのお題だったんだけど、データがどこかに飛んでしまってね。
「灰皿」と「カラオケ」と「考え事」だったと思うんだけどなあ。
↑じゃなかったら、カラオケ屋に行かないものこの二人。

そして、なんだか書いている内に長くなってしまった。
あまりにも側に居るのが当たり前になってしまった二人の、恋の始まりみたいな感じでお願いします。
<(_ _)>

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2012-09-15 : 山羊龍-SS : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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