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ハイドランジア

 あの子がこの宮に出入りするようになってからだろう。
ハーブやら観葉植物やら果ては鉢植えのミニトマト等、
ちょっとした緑を身辺に置くようになったのは。

 アフロディーテの薔薇園やらムウの怪しげな薬園を手伝う位なら、
自分の所のパテオを整備してくれという下心も無きにしもあらずだが、
何より緑を見つけた時の紫龍の微笑みが愛らしくて、
ついつい目に付いた植物を市場で購入するのが習慣になった。

気に入ったモノを見つけると値段に糸目をつけないものだから、
店主の方からも声をかけることが多くなり、
「掘り出し物ですよ」という言葉につられて買ったアジサイは、
枝振りといい、まだ薄い青色はこれから十分楽しめる証のはずなのだが、
しかし、いつもと違って紫龍は浮かない顔を見せる。

「どうかしたのか?もしかして、アレルギーとかか?」
「いえ、その、花に問題はないのですが……、
シュラ、アジサイの花言葉を知ってますか?」
「いや、残念ながら」
「うつりぎっていうんですよ。花びらの色が変わっていくから」
「だから?」

「ですから……」
と、言い淀むとシュラをじっと見つめる。そのちょっと困った表情が可愛くて、
シュラは自分が折れることにした。
「移り気か。でも、これは白から青に、青が群青になっていくんだぞ。
つまり――――想いが濃く深くなっていくと思わないか?」
「深く――――ですか?」
「昨日より好きは、うつりぎとは云わないだろう」

 紫龍は答えないで、ただ、花を見つめている。
「じゃあ、この話も知らないだろう。
シーボルトが欧州にこの花を紹介した時の名称がオタクサっていうんだ。
理由、判るか」
「いえ」

「おたきさんって、奥方の名前を取ったんだと。
でも、そう云うのが恥ずかしいから、地域の名前だとしたんだって」
「へえ」
「機嫌治ったか?」
「別に悪くないです」
「じゃあ、このままでいいな」
「ええ、綺麗な花ですから」

と、シュラの傍らに寄り添う紫龍の、ちょっと赤く染まった微笑みに、シュラはあと一つ。
最愛の恋人の名前が入っている花だとは云わなかった。


――――――――――――――――――――――――――
経済新聞のコラムをちょっぱりSS。
更に、チョーヒマを持てあまし、ほとんど会社で下書き。


ありがとう、会社。ちなみにタイトルは、紫陽花の学名デス。



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2009-07-05 : 山羊龍-SS : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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