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最高の恋人

 シュラの若い恋人はいつでも、どんな時でも礼儀正しい。今とて突然、リビングに出現した、
(もちろん、約束もドアノックも無しにだ)師に向かって、
「老師!」と、いつもよりずっと幼い笑顔。
「ご無沙汰しております」シュラの元から抜け出し、深々と頭を下げる。

再び、師を見つめる視線は一途でまっすぐ。
状況が状況で無かったら、シュラは紫龍をぎゅっと抱き締めていたかもしれない。
だが、それをしないのは決して決して、親代わりの老人が居た所為ではない。

「―――紫龍」
「はい?」重々しく名前を呼ぶ師とは対照的に、答える子供は純真そのものだった。
「……いや、何でもない」
「ですが、何かご用があったのでは?」
「いや、お主らの様子を見に来ただけだ」

「では、お茶でも入れて参ります。
昨日、シュラがチョコケーキを作ってくれたのですが、お召し上がりになりますか?」
「ああ、頼む」
 はいと、そのまままっすぐに台所に駆け込みそうな子供にシュラは漸く口を挟んだ。
「紫龍。先にシャワーでも浴びて来い」
「あっ、ですが……」
「髪、寝起きですごいことになっているぞ」
「それはシュラだって……」

「すまない、紫龍」と、助け船を出してくれたのは意外というよりは、
同じいたたまれなさを感じている老人だった。
「シュラに話があるのだ。ちょっと席を外してくれないか」

 ここで紫龍は初めて二人の間に流れる重苦しい雰囲気を察したのか、
急に不安げな瞳をシュラに向けた。
 大丈夫だからと、安心させるように額にキスを送ると、
シュラは紫龍をバスルームに送り出した。
もちろん、昨日から投げ出してあったバスローブを持たせることを忘れなかった。

 奇妙な長い沈黙の後、すまんのと、先に口火を切ったのは老人の方だった。
「アレは川で良く水浴びをしておってのお。
他は幼馴染みとワシしか、おらんかったから、その、な。
……裸は慣れておるんじゃ。東京に行くさいには注意したのだが、
中々直らんようだ。昔取ったキネヅカという奴だな」

「はあ」
「いや、ソコは突っ込む所だ。意外とボケだのカプリコーン」
と、老師は指摘したが怒ってるわけでは無さそうだった。
「あの子が幾多の困難を乗り越えても、
以前と同じように笑えるのはお主のおかげかもしれんな。―――ありがとう」

「いえ、それは老師のご指導のタマモノですよ。―――それに、」
と、自然とその言葉が出てきた。
「むしろ、俺の方があの子の全てに救われています」
 そうか―――と、云って老師は至極真面目な顔でシュラを見つめた。
その顔はやっと微笑みを取り戻したようだった。それはシュラも同じであった。
「そろそろ茶でも貰おうか」
「では、用意して参ります」そう云って立ち上がったシュラは頭から毛布を、
―――流石に恋人でもない、しかも年長者に裸体を晒すマネはしたくなかった、
被ると足早にリビングを立ち去った。

 色々思うところはあるが、何より一歩間違うと、
千日戦争に勃発しかねかった重苦しい雰囲気を、惜しみもなく清らかな、
産まれたままの姿で払拭した、
美しくも愛らしい恋人を抱き締めるべく、シュラはバスルームに急いだ。

―――――――――――――――――――――――
強いて、云うなら、文章の面白さを狙ってみました。
一歩間違うと、つうか、もう間違ってるんだけど、紫龍教だね、
この人たち(笑)
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2007-06-06 : 山羊龍-SS : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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